おおいた演劇の会 会長 清末 典子


この、「蝉 なきやまず」は、芸術会館で夏に行われる『高校生のためのワークショップ』に向けて、創った作品です。
毎年、夏になれば、全国で戦争について語られます。広島、長崎の原爆、東京大空襲、沖縄・・・それは、とてもとても、大切なことです。でも、これらの都市のことを取り上げられることは多くても、私達の故郷、この「大分」で大空襲があったことを知る若者は、いったいどれくらいいるのでしょうか。いえ、いったい、どれだけ語られてきたのでしょうか。
私達が日々笑い、泣き、生活しているこの地に、昭和20年、同じように生きていた人々の上に焼夷弾の雨が降り、たくさんの人々の命はまるで紙くずのように燃え上がり、大分の町は焦土と化して、大分駅のホームから別府湾が望めたといいます。
 そんな人たちの思いの上に、今の私達があるということを、私たちは忘れてはいけない。そして、知らなければいけないと思うのです。
 夏の熱い盛り、あたり一面に響き渡る蝉の鳴き声・・・それだけは、今も昔も変わらないはず・・・蝉はなにを思い、鳴いているのか・・・いや、泣いているのか。そんなことを考えながら、この題名を考えました。
 このような作品は、一度限りでなく、続けてこそ意義があるものだと思っています。そこで、リーディングという手法で表現するように考えました。